明石城

1. 城のデータ

[所在地] 兵庫県明石市明石公園

[築城年] 1619年

[築城者] 小笠原忠真(忠政)

[遺 構] 本丸巽櫓、坤櫓、三の丸の土塁、石垣、堀

[別 称] 喜春城  

[形 状] 平山城  

[登城年] 2005年4月23日、2014年9月12日

(※トップ写真:明石城・本丸巽櫓)


2. 城の歴史

大坂の陣で戦功を挙げた小笠原忠真は1617年、明石川河口にある船上城に入城する。だが、翌年将軍徳川秀忠から西国諸藩の押さえとなる新城を築くことを命じられ、銀1000貫の普請費用を与えられる。1619年から築城が始まり、近隣の船上城・三木城・高砂城などの廃城から建築部材をリサイクルし完成する。

1632年、忠真は15万石に加増され豊前小倉へと移封となり、代わって松平康直が入城した。その後大久保氏、松平氏、本多氏を経て1682年に松平直明が城主となると、ようやく落ち着き以後松平氏10代が明治まで明石を支配する事になる。


3. 城の見どころ

明石城は日本の標準子午線(東経135度)が通る明石市街の中心部にある。JR明石駅のホームからも北側の高台に2つの三重櫓が並び立っているのを眺めることができる。この2つの櫓が本丸南西隅に建つ坤櫓と、南東隅に建つ巽櫓である。本来本丸の四隅には三重櫓が4基も建っていた(坤櫓と巽櫓以外に艮櫓・乾櫓)のだが、現存するのは南側の2基のみある。

どちらも現存する櫓であり白漆喰の外壁意匠がとても美しい。ちなみに残っているのが手前(南側)の2つの櫓だったおかげで、城の正面から見てこの2つの櫓が並び立つ勇姿を維持することが出来たので結果的に良かったと思う。

(下写真:左が本丸坤櫓、右が巽櫓)

(下写真:本丸坤櫓)

江戸幕府から命を受けた譜代の小笠原氏が城主となり天下普請により築かれた城郭だけあって、白漆喰の城壁、層塔式の櫓など、幕府系の城郭という印象を受ける。忠真の義父である姫路城主・本多忠政の指導を受けたということから姫路城での技術が伝達されていた可能性も大いに考えられる。

縄張については、海岸を見下ろす高台の上に西側から稲荷郭、本丸、二の丸、東の丸の4つの曲輪を並べた連郭式の構成となっており、その高台の麓に三の丸が取り付く。さらに城下町全体を取り囲む外堀も築城当時は存在していた。内堀、中堀、外堀の三重の堀に加え、南は瀬戸内海が、北は剛の池が存在し天然の外堀として明石城を防衛していた。

(下写真:中堀)

本丸には巽櫓の背後に天守台が存在する。その規模は結構大きく、24m×20mの1階平面規模は熊本城天守と同規模であったという。さすがに世の中は江戸幕府の太平の世、幕府への配慮もあり、しかも10万石の大名としては大規模な天守を建てる余裕は無かったのではないだろうか。

(下写真:天守台)


-再登城後の追記-

学生時代、神戸に住んでいたこともあり、明石城には何度となく訪れたことがあった。今回社会人となって久しぶりに(9年ぶり)に神戸出張の機会に2014年9月明石城を訪れることになった。

あいかわらず高台に建つ坤櫓と巽櫓の白く輝く雄姿はとても素晴らしい。現存する三重櫓は全国にも数少ない事例であるので、この明石城の2基の櫓は大変貴重な遺構だ。ちなみに坤櫓の方が巽櫓より若干大きく、城内一の規模を誇っていた。

両三重櫓の意匠、配置については単調にならないように工夫がされている。坤櫓は南側に妻面を見せ、一重目屋根に千鳥破風、二重目屋根に唐破風を配置しているのに対し、巽櫓は反対に平側を南側に向け、一重目屋根に唐破風、二重目屋根に千鳥破風を配置している。城のシンボルとなる最重要の櫓に対し、築城者の想いが伝わってくるような気がする。

明石城の見どころは2基の三重櫓だけではない。何といっても要所に高石垣を積み上げた総石垣造りの城郭であることだ。総石垣造りは西国の城郭の特徴である。石垣の隅部は完成された算木積みとなっており、石垣技術の頂点の技術で築かれている。また、個々の石垣をよく見ると、刻印のある石も中にはあることに気付く。天下普請により築かれたことがよくわかるだろう。

その他、城の大手入口である太鼓門跡の枡形虎口、城の三方を取り囲む幅広い水堀、城の北側を守る剛の池、桜堀、薬研堀なども必見の遺構だ。

(下写真:太鼓門枡形)

坤櫓の背後にある天守台については、五重天守が建つ規模であったが、ついには天守が建てられることがなかったのは実に残念である。しかしながら、南側から天守台を見ると、急勾配の高石垣となっており、実に圧巻だ。また、本丸南側からは土塀越しに(眺望用のテラスがある)明石市街はもちろんのこと、海を挟んで淡路島も遠望することができる。


4. 城のポイント

①三重の堀に囲まれた西国押さえの城 ⇒幕府直命による譜代の城

②未申櫓と巽櫓 ⇒現存する三重櫓、並び立つ勇姿が美しい 

③現存する天守台、石垣、水堀

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